May 2008

May 12, 2008

ひょ,標本が…

先日実家に帰ったときのこと.
なんとなく胸騒ぎがして普段なら滅多に開けない押入れを開け,奥に閉まっておいた標本を確認

げげげっ・・・!! やっぱり喰われてる被害標本標本
←←ヒメヤママユガ,ヘビトンボ,オオゴキブリなどが餌食に.ゴメンナサイ

←なんだかすっきりしてしまった標本箱.大事なテントウムシは全て無事でした.嗜好性があるのかな?

 

大事な標本を食べた犯人はヒメマルカツオブシムシです.
ヒメマルカツオブシムシは世界的な衣類害虫で衣類に穴をあけられた経験のある方も多いのではないでしょうか?
衣類以外にも今回のように昆虫の標本や動物の剥製,乾物などを加害します.

成虫の体長は約3mm,厚みのある短楕円形の丸い虫で,全体的に灰黄色ですが鱗毛があるためマダラ模様に見えます.
幼虫は体表は短毛に覆われており,腹端からは刷毛状の毛の束(槍状毛)が出ています.この毛は,アリや寄生蜂に襲われた際,抜け落ちて敵に絡みつき敵を動けなくする役割があるそうです.

ヒメマルヒメマル幼虫ヒメマル蛹







↑左から成虫・幼虫・蛹

発生は1年に1回で幼虫越冬します.幼虫の間はずっと暗所に隠れながら餌を食べて成長します.
そして,3〜4月ごろに蛹化し,約20〜30日で成虫になります.羽化した成虫は絶食状態のまま約10日ほどそのまま暗所に潜んで交尾をし,産卵を繰り返します.雌成虫は,20〜100個の卵を産むと言われています.

カツオブシムシの興味深いところは,産卵を終えると突然走光性(光に向かう性質)が負から正へと逆転し,暗所から窓などの明るいところへ飛び立つことです.
そのため,この時期になると窓際や壁にポツリと佇んでいるヒメマルちゃんを見かけます.
が,ここで発見した成虫は,既に産卵を終えている可能性が非常に高いということですね.来年はもっと出るかも!?

屋外へ飛び立った成虫は,幼虫とは違い訪花昆虫として花粉や蜜を摂食します.
特にマーガレットやキク,コデマリなどの特に白色や黄色の花でよく見かけます.しかし,不思議なことは産卵を終えてからも餌を食べて約1ヶ月ほど暮らす生態.その後は産卵をしないそうです・・・
ユスリカやカゲロウなどの成虫では,餌を全く取らずに産卵を終えると死んでしまうし,多くの昆虫は産卵をするために餌を取って卵巣を成熟させ産卵しますが,ヒメマルカツオブシムシは絶食状態で産卵後,餌を摂取してただ生きるだけ.

子孫を残すという成虫の役目を果たしてからも余生を楽しむなんて,なんだか人間的なヤツです(川端)



tojiyan at 19:35|PermalinkComments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック